在宅重視を掲げながら、財源難から在宅要介護者にもしわ寄せが及んできた介護保険制度。実際、在宅サービスの給付は、家族介護が前提となっており、その家族があてにできない大都市部では、在宅介護の行き詰まりがより顕著になっていくことが予想されます。
また今後、団塊の世代が続々と65歳以上になることもあり、ますます高齢者施設・住宅に関しての需要は大きくなっていくものと考えられます。
そのような中、現在「高齢者専用賃貸住宅」(以下、高専賃)という制度が、“終の住処”の有力な選択肢として介護事業者等に注目を浴びています。実際、財団法人高齢者住宅財団によれば、この高専賃は月間1,000戸単位という勢いで拡大しているようであります。そこで今回は、この高専賃が何故注目を浴びているのかということを説明したいと思います。
○高専賃とは
2000年4月に施行された「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者居住法)」では、「高齢者向け優良賃貸住宅(以下、高優賃)」と「高齢者円滑入居賃貸住宅」という2つの高齢者賃貸住宅が制度化されました。
前者は、「段差解消、階段寸法、手すりの設置など一定のバリアフリーを満たすもの」といった一定の要件を満たす場合、共同施設部分と高齢者仕様部分の建設費が補助されるとともに、入居者の家賃負担能力と市場家賃の差分を国と自治体が補助するという支援策も講じられるというものです。
後者は、高優賃のような要件はなく、高齢者の入居を拒まない限り、その情報を財団法人高齢者住宅財団のホームページで公開することができるというものです。
つまり、前者は満たすべき要件のハードルが高い代わりに、享受できるメリットが大きく、後者は要件のハードルが低い分だけ、メリットも少ないと言えます。
そして、この二つの高齢者賃貸住宅の枠組みに、一昨年12月から新たに加わったのが「高専賃」という制度であります。
高専賃は、高優賃と高齢者円滑入居賃貸住宅の中間に位置するものであり、文字通り「専ら高齢者に賃貸する住宅」と定義されています。高優賃のような要件はありませんが、高齢者専用であれば財団法人高齢者住宅財団のホームページに情報を掲載できるということになっています。
○介護保険法の改正で“終の住処”候補に
この「高専賃」が注目されてきたのは、昨年4月に改正となった介護保険法が影響を与えています。
まず、改正により介護保険適用の介護付き有料老人ホームに対して地方自治体の抑制が強まり、建設しにくくなったことが挙げられます。これは、保険料の伸びを恐れる自治体が自主規制をかけてきたためであり、これにより介護事業者は、方向転換を余儀なくされたということがあります。
またもう一つの理由としては、一定の基準を満たした高専賃を特定施設に加えるという方針が打ち出されたことが挙げられます。従来の介護保険法では、「介護が付いている住まい(居住施設)」としては、特定施設(有料老人ホーム、軽費老人ホーム=ケアハウス)と認知症高齢者グループホームが認められていましたが、ここに高専賃が加えられた、ということになります。(※図1参照)

従来からある特定施設では、要介護者3人に対して介護職員1人という配置基準が適用されてきました。結果として、事業者にとっては「要介護者であることを入居要件に掲げない限り、事業としての採算性を確保できない」という問題点がありました。
例えば、ひとつの施設に要介護者2人と現時点では介護の必要がない高齢者が1人入居している場合でも、介護職員を1人配置しなくてはいけなかったわけです。そうなると事業性という点では非効率な形態になってしまい、その結果、「今は介護は必要ないが、将来に備えて介護サービスがすぐに受けられる環境に住替えたい」というニーズを満たすことができませんでした。
対して、一定基準を満たした高専賃の場合、相談対応、安否確認、計画策定を除くサービスをアウトソーシングができます。つまり、「必要な介護サービスを必要な時に提供する」という体制を整えることができることになるのです。こうなってくると、事業としての採算性を確保しやすくなるだけでなく、高齢者の「早めの住替え」ニーズを満たすこともできることになり、結果、事業として注目されている理由でもあります。
介護療養型病床の2012年での廃止も伴い、これから医療・福祉両面で高齢者の施設・住まいは劇的に変化していくことは避けられない事実ですが、その中で、この「高専賃」への新しい流れというものが一つのキーワードになるのではないかと考えます。
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